介護の質を高めるために覚えておきたい老人性うつの治療法とは
老人性うつに関する知識は介護に不可欠です。老人性うつと一般的なうつ病では症状の現れ方が異なりますが、治療法はうつ病の治療法と同じです。うつ病の治療は、「薬物療法」「精神療法」「環境調整」の3つを軸として行われます。老人性うつの場合、薬物療法を中心とした治療となるのが一般的です。抗うつ薬を規定量まで徐々に増やしていく方法が基本ですが、高齢者の場合は副作用の影響による転倒の恐れなどもあるため、規定量よりも少量の投薬となることもあります。抗うつ薬は薬効が現れるまでに数週間程度かかりますが、それまでに副作用が現れてしまうことがあります。副作用の辛さに耐えかねて自分で中断してしまうことがあるため、高齢者の場合は継続的に服用するためのサポートも必要です。
薬物療法は、睡眠障害や食欲不振などの症状に効果的な方法です。ただし、抗うつ薬に対する強い抵抗感が効果を弱めてしまうこともあるので、治療を受ける本人が納得していることが重要です。減薬は個人の判断で行わず、医師の指示のもとで行わなければならないこともしっかりと認識してもらう必要があります。薬物療法については、「シニアに役立つ効能:(23)セロトニンで老人性うつ病を防ぐ」でより詳しい内容が紹介されています。
老人性うつの精神療法では、医師やカウンセラーによるヒアリングが行われます。ヒアリングの内容から、必要に応じて認知行動療法や対人関係療法などが行われます。うつ病治療における環境調整とは、ストレスの原因を軽減することです。高齢者の場合は調整が難しい事情を抱えていることも少なくありませんが、地域や福祉サービスなどを絡めて可能な限り環境を調整します。
食生活の偏りが心のバランスを崩す原因となることもあるので、栄養バランスを考えた食生活ができる環境を整えることも大切です。自炊をあまりしない生活をしていると、パンや麺類などの炭水化物が多めの食生活に偏りがちです。老人性うつの治療のために環境調整を行うなら、さまざまな種類の食材からビタミンやミネラル、タンパク質、脂質などの栄養素をバランスよく摂取することも意識しなければなりません。「どんな栄養素と食材をとったらいいの?」では、うつ病の患者にとって望ましい栄養素を摂取できる食材が紹介されています。
老人性うつから回復するためには家族の協力も不可欠です。同居家族がいる中での孤立は、一人暮らしで感じる孤独感よりも大きなものです。常に寄り添うことが難しいとしても、日常生活の中で積極的に声かけをするなどして寄り添っていることを示す必要があります。心に寄り添おうとするあまりに家族もうつ病を抱えてしまうケースがあるので、支える家族が自分自身をうまくコントロールできるよう気をつけることも大切です。